1.木造設計塾開設までの経緯と木造設計塾の方針
1998 年から大工塾が始まり、2010 年に九州大工塾と木造設計塾が開始されました。
三つの塾は、連携しながら継続する計画ですが、これらの一連の活動の経緯を概観しながら、木造設計塾の基本的な方針を考えます。
同時に、大工塾・九州大工塾・木造設計塾・杢人の会の連携のもとで何を目指すのか、について考えます。
2.木造住宅の疑問を解剖する
大工塾や設計塾に集まるきっかけは、実際の現場でいろいろな疑問に突き当たって、それらを解決する糸口を見つけたいという思いが大きいだろうと思います。それらの疑問に対する答えが見つからないと、みずからの設計や大工仕事に確信を持つことができません。まず、どのような疑問があるのか、どこから疑問が生じるのか、どのように疑問に対峙するのか、そこを考えるところから設計塾を始めたいと思います。
3.渡り腮構法の考え方
渡り腮構法は、20 年前に山辺事務所と丹呉事務所で始めた木構造の勉強会で、いろいろな疑問に取り組む中から生まれてきた構法です。木造住宅をひとつの構造システムとしてとらえて、その造り方を構造計算や実験のデータ解析から組み立ててきました。設計塾は、この渡り腮構法をベースに組み立てられています。最初に、その基本的な考え方を解説します。
4.住宅の造られ方
戦後の日本の経済成長の一翼を、住宅産業の形成による住宅の大量生産が担ってきました。そのような流れの中で、木造住宅の造られ方は、従来の手作業から工業化の方向に急速に転換してきました。その一方で、1980 年ごろから従来の木造住宅の技術の見直しや設計思想の見直しが行われるようになり、新たなムーブメントが起こりました。
戦後の、そのような木造住宅の造られ方の歴史を概観しながら、木造住宅のあり方を問います。
5.日本の住宅政策と問題点
戦後の日本の住宅政策が現在の住宅の形をつくり出してきました。その延長上に将来の木造住宅像を築くことができるのかどうか、住宅政策が生み出した問題群をいろいろなデータを読み解きながら、木造住宅のあり方を考えます。そこから、設計塾の方向性を探ります。
6.大工の手法ー大工の視点
大工の手法の講義では、杢人の会の大工さんに、大工が住宅づくりの作業のなかで、木について、木の使い方について、納まりについて、設計図について、どのように考えているのか、どこを重視するのか、どのように作業するのか、いろいろな視点から語ってもらいたいと思っています。そこから、設計者と大工との共同作業のあり方、図面の役割などを考えたいと思います。
今回は、この講義の進行役の内島さんから、設計図から大工はどのよう造るのか、という点について話してもらって、以後の講義の方針を決めたいと思います。



|