大工塾とは

大工塾は大工技術を学ぶ場ではなくて、大工として今何を考えるべきかを、皆で学ぼうとする場です。
現在の環境に積極的に目を向けて、住宅造りの持つ意味をあらためて考えることで、主体的な住宅の造り手としての大工像を探ろうとするものです。
大工塾の塾生は150人を超えましたが、それぞれの塾生は、それぞれの地域で、木造住宅を造り続けてゆく運動を展開しています。

1)大工塾の前身は建前学校

1994年に始まった建前学校が、大工塾の前身です。丹呉事務所で設計した住宅の建前を、若い大工さんに開放して木造住宅の勉強会として始めたものです。若い大工さんに建前作業に参加してもらって、現場から木造の技術を考える場にしようという試みでした。

2)大工塾は1998年に始まりました

第1回大工塾

建前学校に参加する常連の大工さんが増えて、もう少し体系的に木造住宅を考える場を作ろうという要求が強くなってきて、1998年に埼玉県朝霞市の材木屋さんの施設を借りて1回目の大工塾が開催されました。このとき集まった25人の大工さんは、建前学校の参加者が半分、うわさを聞いて参加した大工さんが半分で、講師と塾生の議論が白熱する大変刺激に満ちた講義が展開されました。講義後の懇親会では、呑みながらの延長講義が繰り広げられました。

3)環境問題を考える

製材所見学
中間処理場見学

大工塾の講義は、木造技術・木構造を考える部分と環境問題を考える部分との二つに分かれています。参加する大工さんの目指す技術が伝統型の大工技術であることが、このような講義を作り出してきました。なぜ伝統型の技術が必要なのか、その技術をどのような目的に向けて使用するのか、どのように伝統型の技術を使うのかという基本的な問い掛けは、自分たちが住む地球の環境について当事者として考えるという姿勢に行き着きます。産廃の中間処理場・不法投棄の現場・浄化槽の見学、山での林業体験の講義を通して、現場からの視点でそれらの問題に取組むことが大工塾の方法論となりました。

4)実大試験体の加力試験は1回目の大工塾から続いています

構造実験1
構造実験2

1992年に始まった丹呉事務所と山辺事務所の共同の構造勉強会は、1995年の阪神大震災の被害に直面して、「地震に強い木造住宅をどのように造り、どのように住む人の命を守るのか」という重いテーマに取り組むことになりました。当時、渡り腮構法のような伝統型構法の耐震性能のデータが整理されていなかったために、それを自分たちで揃えようということになって、手作りの実験装置をつくって実物と同じ大きさの壁の加力試験を1996年に始めました。その構造実験は大工塾に引き継がれて、構造の講義の中心となりました。この実験を体験することで、単なる知識としての構造ではなく、具体的な技術のあり方としての木構造の本質に迫ることができると考えています。

5)渡り腮構法は大工塾の活動を通して確立されてきました

渡り腮構法

「渡り腮構法」は、丹呉事務所と山辺事務所との共同研究と大工塾の実大試験のデータを駆使してつくり上げられてきた構法です。実大試験のデータを使用して行われる山辺事務所の構造計算、それを組み込んだ丹呉事務所の設計、その設計にもとづいた施工、施工の現場から出てくる問題点や新たな工夫、それらを更に取り入れた構造計算と設計という繰り返しのフィードバックの中でつくり上げられてきました。伝統型の構法を最新の構造設計理論の中で検証しながらつくる方法論として、今も進化し続けています

6)杢人の会は大工塾の塾生が集まってつくった協同組合です

杢人の会

大工塾で学んだこと、考えたことを実践する家造りを続ける仕組みとして2007年に杢人の会が結成されました。そこでめざすのは、大工塾で考えてきた家づくりと維持管理を継続してゆくための協同です。長く住むことができる家は、つくる技術だけでは実現できません。建設後の維持管理を継続させてゆくことが必要です。同じ意識と同じ認識と同じ技術を持った人間が協同して、その仕組みづくりをめざすのが杢人の会です。

7)大工塾のネットワークが目指すこと【大工塾+九州大工塾+木造設計塾+杢人の会】

家づくりは、多様な関係性の中で可能になる仕事であり、その関係性の継続も家づくりの中に含まれる、と考えます。

家を確かな技術でつくる→その技術を進化させる→その技術を伝える
快適に生活できる家づくりの素材と技術を確立する→その技術を進化させる→その技術を伝える
家を長く維持管理する仕組みを確立する→維持管理を継続するための技術と人材を確立する→大工以外の職種との連携をつくる→基礎屋・左官屋・板金屋・瓦屋・建具屋・電気屋・設備屋とのチームづくり→チーム同士のネットワークづくり
家に住み、維持してゆく人達との連携の確立

大工塾ネットワーク

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